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議会報告

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平成28年2月

平成28年2月定例会 一般質問(要旨)

1.世界文化遺産について

(1)長崎の教会群の推薦取り下げ後の対応

質 問

企業等による連携関連商品化での知名度アップは?

回 答

潜在的に普遍的価値があるとの評価もいただいておりイコモスからの支援と助言を受け推薦書の再構築に取り掛かる。イコモスに対し十分に説明できるよう、これまで実施してきた「禁教期・潜伏期」に関する調査に基づく「資料の作成」や「現地の再調査」開始し、3月末までに文化庁へ推薦書素案を提出できるよう最大限努力する。
構成資産のうち、特に保存管理に多額の予算を要する端島は、昨年9月に「端島(軍艦島)整備基金」を創設し、端島見学施設使用料やふるさと納税、個人・団体からの寄付金を積み立てることになった。基金創設後は、長崎サミットでの経済団体への寄付の呼びかけや、東京・大阪で長崎ゆかりの経済人との情報交換会などで周知を図った。
本年度の積立額は、端島の見学者やふるさと納税が増加したことから、当初見込みより900万円多い5,700万円となる予定、平成28年度から新たにクレジット決済を導入することにより、より簡易に寄付できる仕組みを構築するとともに市内各所に募金箱を設置するよう準備を進めている。また、負担軽減のための有利な起債制度の創設を国に対して働きかける。

意 見

政府推薦が決定した時、政府関係者は「教会群はキリスト教の遺産は世界的に理解しやすい」、本県も「遺産候補としての価値は高く、推薦書の熟度もある」と説明し、イコモスの現地調査でも調査員から批判的な質問は出ず、良い方向に進んでいると感じていた。国内外の専門家によれば、多様な価値がある故に、価値が絞り込めなかった。8件の教会建築は、建築的特徴を重視して説明したため、ストーリー上で最も重要な禁教期と、どのようにつながっているのか歴史的な証明が欠落していた。現在の構成資産(14資産)のうち、見直し対象になる可能性も否定できない。あるイコモス関係者は、「つぎはぎだらけで体裁を整えた推薦書」と厳しく批判している。
中間報告の指摘は、普遍的価値観は認めるものの、世界の専門家の見る目と、日本の専門家の見る目に大きな開きや違いがあったと思われる。2018年の再推薦には、残された1カ月間でイコモスの支援と助言が重要な鍵となる。市長より、行政報告のなかで推薦取り下げの経過報告を受けたが、危機感や緊張感は伝わってこなかった。推薦取り下げを受けてのマスコミ関係によれば、昨年11月パリであった政府とイコモスとの関係会議で、今回の中間報告と同じ内容の指摘を受けていた。イコモスは教会群の世界遺産の価値は認めており、登録への道は閉ざされたわけではないとの報道がなされた。
登録に向けての長崎の教会群は、平成24年(2012年)7月国の文化審議会の特別委員会での推薦見送り、平成25年(2013年)8月~9月にかけて文化審議会は「長崎の教会群」を推薦決定したが、内閣官房の有識者会議は「産業革命遺産」の推薦を決定、「長崎の教会群」は見送りとなっている。今回推薦取り下げで、見送り・見直しと3回目の厳しい状況を迎えている。今日までイコモスの助言を受けながら推薦書を作成してきたにも関わらず、非常に残念でたまらない。
このような経緯を踏まえ、具体的なイコモスとの対話スケジュールが見えないなかで、改めて指摘内容の再検証は難しいものがあると思うが、文化庁や長崎県、関係機関との十分な連携ときめ細やかな打ち合わせなど、イコモスに対し十分な説明が出来るように、「禁教・潜伏期」に関する資料作成や現地調査で、厳しい状況を打ち破ってもらいたい。

 

(2)関係団体との連携による知名度向上について

質 問

JRのデスティネーションキャンペーンや旅行会社による商品造成をはじめ、産学官民との協働事業の取り組み状況は?

回 答

昨年の世界遺産登録を契機として、金融機関の応援定期や飲料メーカーの登録記念缶などが発売された。長崎市も、平成27年度に世界遺産などの観光資源にちなんだ新たなお土産品開発のコンテストを開催し、長崎観光のイメージアップに取り組んでいる。このコンテストには、歴史や文化を活かした魅力あふれる59の新商品の応募があった。
そのうち、世界遺産部門には33の商品の応募があり、事業者の世界遺産を活かした商品開発への意識が高まっている。平成28年度も引き続き、世界遺産などの観光資源をテーマとしたお土産品開発を行うことで、企業等による連携関連商品化での知名度アップを図る。産業革命遺産は世界遺産登録されたが、将来にわたって保存し、後世にその価値を引き継ぐことが必要で、これからも財源確保と知名度アップに取り組んでいく。

要 望

産業革命遺産の構成資産のうち、軍艦島(端島)、グラーバー住宅、高島炭鉱後は長崎市所有の資産であり、保全・管理のためには相当な財源が必要である。財政基盤の弱い本市の負担を軽減するために、新たにクレジット決済システムを導入しての寄付を行う。市内各所に募金箱を設置する準備を進めている。このことは一定評価をしますので、今後、関係団体、庁内の関係部署と連携を図り個人・団体への寄付の呼びかけや、世界遺産関連の商品を取り扱っている企業や諸団体などへ、より多くの募金箱が設置できるよう周知活動を行ってもらいたい。
また、国や、長崎県に対しては、今後とも、国の「国宝重要文化財等保存整備費補助金」、長崎県の「指定文化財保存整備事業補助金」など補助制度の拡充、世界遺産に特化した有利な起債制度の創設、稼働中の世界遺産に対する固定資産税と都市計画税の軽減措置が適用されるように働きかけてもらいたい。

2.長崎港の整備について

(1)2バース化に向けた整備計画

質 問

型客船が2隻同時に停泊できる2バース化に向けた整備計画は?

回 答

長崎港松が枝地区に、クルーズ客船の大型化や拡大するクルーズ需要に対応した旅客船埠頭の整備を行うため、平成26年の国の交通政策審議会により、松ヶ枝岸壁を360mから730mに延伸し、15万トン級客船と7万トン級客船、または10万トン級客船が2隻同時に接岸可能となる2バース化とする港湾計画の改定が承認された。今のところ事業化がなされておらず、事業費も確定していないが、着工された場合は約10年での完成を目指すとされている。事業内容は、2バース化に対応した岸壁整備と併せて、入国審査や観光地案内などを円滑に行うためのターミナル施設及びツアーバス駐車場など、国道499号に接続する臨海道路の整備が計画されている。

意 見
要 望

平成26年に、国の交通審議会で松ヶ枝国際観光船埠頭の岸壁を730mに延長する2バース化とする港湾計画の改定が承認され、着工後、完成までに10年での完成を目指す、との答弁がありましたが、長崎県の考えは、港湾利用者と調整を図りながら、平成30年代後半の完成を目指し、埠頭内の土地利用の検討を含め整備の推進を図るとのことです。当然、該当する関係団体や関係する地域への説明はされていると思いますが、県と連携をとりながら、適宜、整備計画の説明に努めてもらいたい。
又、2バース化に向けての整備計画と併せて、東アジアへの海の玄関口としての機能強化・充実に向けて、次世代型長崎港湾都市構想会議のビジョンや、民間の出島ハーバー「日本のモナコ構想」のアイデアなど長崎県とともに具現化に向けた検討を要請する。

 

(2)クルーズ客船の受け入れ態勢

質 問

欧米からのクルーズの誘致を図ることが、長崎港の安定的なクルーズ需要に繋がると思うが見解は?

回 答

長崎港に入港している客船の約7割が中国からの客船であり、ここ数年の入港増の主な要因は、中国発着クルーズが増えている。中国経済の停滞や政治問題等の不安要素はあるが、欧米の大手クルーズ船会社も相次いで中国への新船投入を発表しており、中国クルーズ市場は急速に拡大している。クルーズ客船の誘致は、アメリカ、シンガポール、香港のクルーズ博における出展のほか、イギリス、フランスなど欧州各国のクルーズ船社に対してセールスを行っている。
長崎県は、客船の大きさや乗客数に関わらず、高品質のクルーズ客船誘致のため東アジアに限らず、地域バランスを考慮してセールス活動を行うことにしている。長崎発着のクルーズは、これまで「飛鳥Ⅱ」等をチャーターした商品が数年前まで販売されていた。このような商品は、出入港前後の日程で市内宿泊を伴うことから、交流人口及び消費の拡大に繋がることが期待でき、県と連携して船会社や旅行会社に対して商品造成に向けた働きかけを行っていく。

 

指 摘
要 望

観光振興計画は、県との連携のなかでそれぞれ数値目標を立てて、事業の具体化を行おうとしているが、目標数の設定根拠が分かりづらい。また、警備態勢等を見直して、長崎港への最大寄港数をどの程度見込んでいるのか、含めてシュミレーションしなければ、課題・問題(貸切バス・駐車場)などの解決には繋がらない。
クルーズ客船入港は、現在、東アジアの中国・韓国・台湾からが大半を占め、今後数年間は継続するものと見込まれている。将来を見据えて、利用頻度の少ない水辺の森岸壁の有効活用(同時入港)、長崎発着のクルーズ(福岡で降りて、長崎への観光を!そして長崎から乗船する。あるいは、長崎で降りて、九州管内を観光して!福岡から乗り込む旅行商品)の提案や、欧米への売り込みなど、県との連携で強化を図ってもらいたい。
また、国土交通省は、クルーズ船の旅客施設などを建設する際に国が資金面で協力できるよう、港湾法を改正(国が費用の一部を港湾管理者の自治体などに無利子で貸し付ける制度)する方針を示している。このような制度の活用も含め、交流人口の拡大につなげてもらいたい。

3.マイナンバーカードの普及について

質 問

住民基本台帳カード発行にあたっての成果と課題をどのように検証し、どのように活かすのか?

回 答

住民基本台帳カードは、平成15年8月から交付が始まりこれまで約42,000枚、長崎市民の約9.5%に交付しており、全国平均の交付率6.6%を上回っている。利用方法は、公的な身分証明や住民票の申請等に利用されたが、ICカードを利用する仕組みの等の問題もあり、カードとしての普及は進まなかった。しかし、住民基本台帳ネットワークシステムが整備され、マイナンバー制度でも引き続き利用される重要な基幹システムとなっている。課題は、身近にカードを利用するソフトウェアを準備できなかったことが、利用拡大に繋がらなかった要因の一つであると認識している。
マイナンバーの通知カードは、「転送不要」の簡易書留で世帯主あてに送付されたが、長崎市の場合は全世帯にあたる210,201通が送付され、返戻が22,751通あった。そのうち、11,590通を2月19日までに交付しており、残りが11,161通となっている。「郵便局の引受期間を経過したもの」は、対象者の所在が分かっているので、通知カードが市民の皆様の手元に届くよう最大限の努力を行う。マイナンバーカードの申請状況は、2月19日現在で23,213件、人口の約5%が申請しているが、申請から出来上がりの期間が非常に長くなっており、長崎市では現在645枚カードを交付している。通知カードの保管は、国からの通知などで概ね3ヶ月間とされており、本年3月末には廃棄の期日を迎える。最終的に700通が所在の不明な世帯であり、現在、現地調査に着手した。

意 見
要 望

昨年の9月議会の一般質問のなかで、個人番号カードの配布及び切り替え手続き、通知カードの返戻対応など一時的に業務量が増大することが懸念されるので、職員の応援加勢を含めて市民サービスの低下とならないように要請をしていた。住民票が長崎市にあるということは、市税の納入義務もあることですので、連絡の取れない世帯については、全庁的対応のなかで現地調査を進めてもらいたい。

4.新西工場稼働に向けた取り組みについて

質 問

本年7月から分別方法が変更になるが、市民への周知方法や現在の取り組みは?

回 答

燃やせないごみとして青色の袋で捨てられていた「プラスチック製品、ゴム製品、革製品」が燃やせるごみとして処理できるようになり分別方法が変更になる。新西工場は、本年7月から試運転が開始され、10月の供用開始に向け工事が進められている。試運転開始の7月からは、現在、青色の袋燃やせないごみの「プラスチック製品、ゴム製品、革製品」が焼却可能となることから7月から分別変更となる。黄色の袋で出している「プラスチック製容器包装」は引き続き容器包装リサイクル法に基づいたリサイクルを進めるため、7月以降もこれまで通り黄色の袋で変更はない。

質 問

余熱利用施設の建設及び地域環境整備の取り組み状況は?

回 答

平成24年7月に地元と締結したプール及び厚生施設の整備を行っている。プール部分は、25mの7コースの温水プールを、厚生施設は浴室等を備えている。事業の進捗は、現在、実施設計を行っており本議会の当初予算に計上している。計画は、平成28年秋ごろから建設工事に着手し、平成30年1月に施設の供用開始を目指している。また、地域環境整備は、余熱利用施設と同様に覚書に基づき、公民館・集会所、小榊総合グランド、皇后島、通称「ねずみ島」の整備等について、順次年次計画で実施する。公民館・集会所の整備は、平成28年度に計画している3ヶ所を実施することで全て完了する予定となっている。今後も、環境整備は、地元の皆様と協議をさせて頂きながら進めていく。

質 問

環境影響評価(環境アセスメント)の検証及び跡地の有効活用は?

回 答

新西工場稼働後は、地元の皆様に安心して頂くために、環境影響の評価について臭気やダイオキシンについて観測を行い検証し、施設内に市職員を配置しながら事業者が実施する施設の運転・管理を適正に行うように直接的監視を行う。現在の、西工場の跡地活用は、6月中に搬入が終了し、その後は施設の閉鎖に向けて内部の清掃等の後片付けを行う。現西工場は、ごみの収集を行う職員の事務所及びパッカー車の車庫となる環境センターの移転先として活用できないか、環境部内で管理棟や工場棟の一部を利用しての活用を検討している。煙突の解体は、このままの状態では老朽化が進み、煙突の維持管理がますます困難となっていくため、早期解体について検討を進めている。

要 望

地元の皆様が懸念されている臭気やダイオキシンについて観測をするとのことでしたので了とするが、交通量や騒音の調査も実施するとともに、今後設置される「運営協議会」での調査報告、地域との連携をお願いする。地元の強い要望が出ている「煙突の解体」については、検討の結論を早い時期に示せるよう注力願う。

5.斜面市街地再生事業について

意 見
要 望

国土交通大臣の承認をうけ平成7年度から特に整備が必要な8地区を重点地区として、老朽住宅の除却や建替え、道路公園等の地区施設の整備、従前居住者の居住確保等を総合的に行い、防災性の向上や居住環境の改善を図ることを目的に整備事業が進められている。しかし、平成7年度の事業年度から20年前後の期間を費やし、完成の時期が見えない状況にある。これらの事業が計画通りに進まない理由は、斜面地という地形上の制約、地区全体では総論賛成であるが、権利関係が輻輳している場合が多く、用地買収や建物移転補償に伴う生活の再建が困難なケースが多いことなど予想以上に長い時間を有している。
事業検討段階から長い期間を有するなか、住民の理解、協力についても計画から実施まで長時間を経過しますと再度の意見集約、世代が変われば意思統一が必要になるなど、進捗に支障が生じる事が懸念される。そのためにも、市民の関心とまちづくりに対する機運の醸成を図るうえからも、計画通りの事業完成が強く求められている。重点地区の更に外側には、整備促進区域と位置付けられた部分もある。これまで事業に長期間を要したことを考えると、現在、長崎市が事業を進めている即効性のある「車みち整備事業」の手法を取り入れて、斜面市街地再生事業の整理・見直しを行い、住環境の改善に努めてもらいたい。

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